労災保険の特別加入制度

一人親方とその家族・仲間を守る労働者災害補償保険。その仕組みを説明します。

  • HOME
  • 労災保険特別加入制度

労災保険の正式名称は「労働者災害補償保険」と言います。読んで字のごとく、労働者を災害から守るための補償を行う保険の事です。
では誰が労働者を災害から守ってくれるのか?災害とは何なのか?そして、保険に入るためにはどのような規定があるのか?
ここでは、労働者災害補償保険(以下、労災保険)と労働者災害補償保険の特別加入制度(以下、一人親方の労災保険)について説明していきましょう。

目次

労災保険とは

国の社会保障制度の一つである「労災保険」は、労働者を労働を起因とする災害から守るための保険です。労働を起因とするとは簡単に表すと、仕事により起きてしまった事故でケガや病気になる事です。
そして、仕事をしている中で避けようがなく起きてしまった事故によるケガ、もしくは病気の事を大義で「労災事故」と表します。
例えば、仕事中に脚立から足を滑らしてしまい骨折をしたとしましょう。歩けない、または痛くていられなければ病院に行きますよね。軽い症状であれば病院で診察後、痛み止めなどの薬を処方してもらい、通院となります。ひどい骨折だと手術となることもあります。さらに大きいケガであれば、入院という事もあります。ここで必要なお金は、初期治療費・診療費・薬代・入院費・手術費・通院費。その他、休んでいる間は仕事ができなくても、家族の生活費がかかります。
労災保険は、このような労働を起因とするケガや病気から「労働者」を守るめの、大変重要な補償制度と言えるでしょう。
また、労働者に万が一のことがあったときには、その家族や遺族守ることにもなります。労災保険は、仕事によるケガや病気で経済的・精神的に貧窮することから国民を守ることであり、精神的な支えにもなる大変重要な国の保険なのです。
目次へ戻る

労災保険の補償内容

労災保険は読んで字のごとく「保険」です。国の保険制度です。保険ですから「補償」をしてくれます。ではいったい何を保障してくれるのでしょうか。
簡単に言うと労働者への生活補償や通院や手術の補償。そして、万が一加入者が死亡したときなどの遺族への補償を国が行う保険です。労災保険は、労災事故により被害を受けてしまった被保険者(保険をかけてもらっている者)を守るためにかけられる日本の「社会保障制度」の中の一つの保険制度です。
そして通院や、入院、薬などにかかる治療や療養費用を100%補償してくれます。100%ですから、労働者が負担するお金は0円という事になりますよね。
さらに、仕事ができなくなった時の休業中の収入まで補償してくれます。
会社員(雇用される側の者)の方は、休業中の収入として「直近3ヵ月間の賃金総額から一日当たりの平均賃金額(手当や賞与は除く)」が支払われます。最低保証は平均賃金額の60%となります。
例えば、1ヵ月の平均賃金額が25万円の場合の休業中の賃金は、単純計算で「20万円~15万円」となります。(あくまでも一例と捉えてください)
次に治療代です。ケガや病気で通院、入院等した場合は「治療費用」がかかります。ここで間違いやすいのは「3割のみ負担でしょ?」って事です。この3割負担とは、あくまで「労働をを起因としない」時に使う「国民健康保険」を適用した時です。
労災保険は「労働を起因とする」時に使いますので、個人負担は0円です。国が10割負担してくれます。ここで注意することは、入院や手術、薬もそうです保険適用外の費用は自己負担となる可能性がありますので注意してください。
例えば、入院時の差額ベット代や食事代、先進医療や先進薬などです。※例外的にすべてが認められる場合もあります。
何度も言いますが、労災保険は「労働を起因とする病気やケガ」に対応しています。ということは「労働を起因としない日常生活において」の病気やケガに労災保険は使えません。また、「日常生活においての病気ケガ」に労災保険を使用すると、虚偽の申告で法律で罰せられます。
よく「労災隠し」という言葉をききますが、これは法的には「重罪」であり、労働災害から労働者を守るためにある「労災保険」を正当な理由もなく使わせないということがあってはなりません。労働者は正当な理由であれば、いつでも労災保険を使用する事ができるという権利があることを覚えておきましょう。
目次へ戻る

一人親方の労災保険とは

労災保険は「労働者」を守る保険です。労働者とは、労働をすることにより、その対価として収入を得て生活を営む者の事を言います。そのものを守るための保険が「労災保険」でした。
では一人親方はどうでしょうか?
残念ながら一人親方というのは、法律的には「労働者」として扱われません。一人親方はなんと「非労働者」なのです。
非労働者ということは、労働者ではない、という事ですから「労災保険」には通常は加入できませんよね。
つまり、一人親方はある意味働いて収入を得てはいけないという解釈がされています。もっと簡単に言えば、会社でいえば「社長」となりますし、個人でいえば「個人事業主」となります。社長や個人事業主は労働者ではありません。働いてはいけないという不思議な職業なのです。
ここでは「労働」の定義については記載していません。別の章を参考にしてみてください。
さて、一人親方は読んで字のごとく「一人で親方を営む」ということです。では、「親方業」って何でしょう?疑問が湧いてきますよね。そこはこの章「一人親方判断基準」で詳しく説明していますのでご覧ください。
そうは言っても一人親方は、生活を営むための何らかの生産活動をしています。実際には一人で仕事をし、お金を稼いで生活を営んでいます。
では、仕事中に起きたケガや病気で働けなくなったらどうなるのでしょうか。
誰も補償してくれませんよね。働けないという事は、収入がまったく入ってこないという事になります。そして瞬く間に、生活が成り立たなくなってしまう事でしょう。日本では、住居費や食費・ガス代や上下水道代も、しいては税金の納付もすべて「お金・金銭」を媒介にしています。つまり「食う・住む・寝る」にはお金が必要なのです。払えなくなれば生活ができなくなってしまいます。そんなことでは、日本国内では誰も事業を起こそうなんて考えなくなりますよね。事業を起こす人がいなくなるという事は、生産活動・経済活動が減衰してしまいます。
そこで国は考えました。では、一人親方は非労働者で労災保険には通常は加入できないけれど、特別に労災保険に加入できるようにしよう。
労災保険は「労働者災害補償保険」ですが、一人親方の労災保険の正確な名称は「労働者災害補償保険の特別加入制度」と言います。特別に加入できるようにしたよ、って意味なんでしょうね。
目次へ戻る

強制保険と任意保険

このような質問が問い合わせで多くみられます。
「一人親方なんですが、労災保険に入っていないと現場に入れないだけでなく、仕事も回さないって言われたます。労災保険って強制なんですか?また、入らなければ仕事ももらえないんですか?それって、国の指導なんですか?」
さて、本当のところはどうでしょう?
簡単にお答えしますと、一人親方は労災保険加入にかんしては強制ではありません。ですから、労災保険に加入していなくても「法的罰則」は一切ありません。
あれ?おかしいな?と思った方が多い事でしょう。
先ほどもお話ししたように、一人親方は法的には「労働者」ではありません。労災保険は「労働者を労働を起因とするケガや病気」から守るための国の保険です。ですから「労働者」しか入りたくても入れません。とは言っても一人親方は実質上、働かなければ食べていけません。なので「特別に加入できるようにした制度」なのです。特別に入れるようにしたわけですか、別に入らなくてもいいですよって事です。入るか入らないかは個人の責任で検討してくださいね、という事なのです。
つまり一人親方の労災保険は強制保険では無く「任意加入の保険」です。強制加入ではないので、入りたくなければ入らなくても法的に罰せられることはありません。
では、強制保険と任意保険の違いは何なのでしょうか?
強制保険とは「国が日本で居住する上で加入義務がある保険」の事です。
例を挙げれば、国民健康保険ですね。これは医者に行ったときに保険証を提示します。すると医者にかかったお金は3割は自己負担ですが、残り7割は国が負担してくれます。この保険は「国民皆保険制度」という法律で加入義務が定められており、日本で生活する上では強制的に加入される保険です。また、年金保険もそうですよね。車の保険でいえば自賠責保険です。
任意保険とは「保険制度はあるけれど、加入するかどうかは個人の責任で検討し、加入しなくても法的に罰はない保険」の事です。
例を挙げれば民間が行っている保険です。これは、個人が必要だと思えば加入すればいいし、それに対して国は何ら責任を持ちません。一人親方の労災保険は、国の制度ではあるけれど、加入していなくても法的な罰はありませんし、労災事故による補償は加入者のみに行い、加入していない者には一切の救済はありません。
ここで勘違いしやすいのは、労災保険は「強制保険」です。しかし、一人親方の労災保険は「任意保険」なのです。
労災保険は「雇用される者」がは加入するもですので、雇用主(法人などの企業)は強制的に保険をかけなければなりません。一人親方の労災保険は、雇用されてはいない非労働者ですから、任意保険となるわけです。
目次へ戻る

現場入場になぜ一人親方労災保険加入が必要なのか

強制保険ではないという事は「自分の判断で加入するかしないか」を決めることができるという事ですよね。なのになぜ元請さんや依頼主から「加入していないと仕事を回せないよ」って言うことになんるのでしょうか?任意保険なんだから自分で加入するかどうか決めていいんでしょう?
それは、自分から見て自分を守るための保険と考えているから疑問が湧いて来てしまいます。元請さんから見て現場で働く者全員を守るためと考えていくと理解できるかと思います。
では、その理由を紐解いていきましょう。
例えばです。仕事現場で一人親方が事故を起こした(ケガ)をしたとしましょう。誰が責任を取るのでしょうか?病院代は?薬代は?手術となれば、入院代は?手術代は?
一人親方の間では「ケガと弁当は自分持ち」と言って、全部自分で責任を持つのが職人という意味の合言葉があったそうです。恰好いいし粋ですよね。
でもそれは「自分の事だけ自分で責任を取る」という事です。自分の責任以外に何があるのでしょう。
それは、「現場で安全に仕事が遂行できる状態にする責任」つまり、その現場の仕事を依頼した「元請け・依頼主」(法人・個人は関係ない)が現場で仕事をさせる上で、安全に関して全責任を負うという責任です。一人親方の労災保険に入っていない者を使ったとしても、元請けは罰せられることはありません。しかしながら、その者が労災事故によりケガををした場合は、元請けや依頼主がその者が復帰できるまで、またその者の遺族までもすべて「補償」しなければいけません。これは元請けにとっては、大変な負担になってしまいます。
※労働契約法(労働者の安全への配慮)第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
責任を負いたくないから労災を使える事を隠しすと労災隠しとなり「大変重い罪」となります。
隠さなかったとしても「現場の中に労災保険に入っていない一人親方を使っていた」ことにより起きてしまった労災事故に関し、「安全配慮義務違反」を科す場合があります。また、事故原因が判明するまで、また同じような事故が二度と起きないように現場を止めて「調査・指導」をする場合があります。 現場が止まってしまったら?
莫大なお金の損失です。それだけではありません。
その現場にいた他の「一人親方」たち全員の仕事が止まってしまい、働けなくなってしまいます。働けないということはその現場で働く方全員の「収入が無くなる」ということにつながります。
たった一人の親方が「一人親方の労災保険」に加入していなかっただけで、現場で働く全員に多大な迷惑をかけてしまいます。
つまり「特別加入の労災保険」は自分を守るだけでなく、現場で働くみんなを守るものなのです。加入は任意だからと言って「お金がもったいないし、ケガや病気になることはないから自分だけ入るのはやめよう!」とはいかないのが実情です。
そして「自分だけは大丈夫」という、根拠もない自信が一番危険。
ですから、元請けや依頼主(現場監督・管理者全員)は「労災入っている?入っていなければ仕事を渡せない」となるわけです。
目次へ戻る

労災保険と国民健康保険の違い

労災保険も国民健康保険も狭義の意味で医療に関しての「保険制度」であることに変わりはありません。ではなぜ同じような保険に二重に入るの?という疑問が湧いてきますよね。果たして本当に同じ内容の保険なのでしょうか?
労災保険と国民健康保険は何が違うのかを説明していきましょう。
労災保険の正式名称は「労働者災害補償保険」という事は前に説明しましたが、労働を起因とする災害に対しての補償をする保険です。ですから「労働を起因とするケガや病気」の時にしか使えません。強いて言えば労働を起因とするケガや病気以外は使ってはいけない「保険制度」なのです。
一方、国民健康保険は「国民が一般的な生活をするうえで起きたケガや病気」に対して使うことができる制度です。
まとめると以下の通りです。
労働を起因とする=労災保険を使用します。
労働を起因としない=国民健康保険を使用します。
簡単ですよね。
「労働中のケガや病気でも国保を使えばいいよ」、もしくは「だったら二つ使えばお得では?」と今考えた親方さま。
大変危険な考え方ですのでおやめくださいね。
一番やってはいけない事。それは、労働を起因とするケガや病気を隠して「国民健康保険」を使用してしまう事です。これは「虚偽の報告」となり詐称罪にもなりかねません。また、国の制度ですから「同時に二つの制度を使用」することは禁止です。正当な「保険制度」のどちらか一方を使用しましょう。
労災保険の制度は、医療にかかわる費用に関して「100%」保障してくれます。(保険適用外を除く)また、休業中は給料のような形として収入の補償もしてくれます。労災加入する際に「給付基礎日額」を自分で選択しすることができます。休業中は、その金額の約60~80%を支給をしてくれます。
国民健康保険の制度では、皆さんがよく知る「30%は自己負担」となります。(年齢により負担率が変わります)休業に対しての給付は一切ありません。
どちらにせよ、労働中のケガや病気に関して「労災保険を使用する」というのが法律で定められていますので、労災事故は労災保険を使用しなければなりません。
国民健康保険は利用できませんので、気を付けましょう。
目次へ戻る

一人親方の労災保険の加入方法

労災保険は本来、労働者・雇用される者にのみ加入資格がある強制保険でした。しかしながら労働者として認められていない一人親方でも特別に労災へ加入できるようにした制度が「一人親方の労災保険」ですので、雇用されるその仕組みを理解していれば簡単です。
会社員は、雇用する側と雇用される側の間で労働契約(雇用契約)を結び、雇用される側は労働を提供するその対価として雇用主から賃金を貰います。つまり、この契約に似た関係を作れば「労災保険に特別に加入できるようにしましょう」というわけです。
一人親方の労災保険を扱っている承認団体へ加入することにより「団体=雇用する側」「一人親方=雇用される側」という形になります。そこには労働に関する契約は一切ないので、労働はなく、対価は生まれません。会社員のような「時間や休日などにも縛られる」こともありません。あたかも雇用されたような「形」をとるだけということです。非労働者である一人親方でも、団体や組織、組合の一員になることで労災保険に加入することができるようになります。ですので、一人親方の労災保険取り扱いの承認団体で労災保険に加入する事ができます。労働局や、労働基準監督署へ行っても労災保険への加入はできませんので、注意してくださいね。
最近では、インターネットでも簡単に加入できるようにしている団体が増えているので、そこに相談してみるのも良いでしょう。
目次へ戻る

最後に

いかがでしたか?
強制加入ではなくても加入する方が絶対お得な特別加入の労災保険制度。
自分を守るだけではなく、ご家族や遺族も守る。そして、仕事仲間も守るための保険制度です。利用しない手はありませんよね。
そして、これが一番大事だと思います。
自分の「信頼・信用」を守りましょう。
信頼・信用を得るまでは時間もかかり大変ですが、失うのは一瞬です。
その信頼も守れる補償制度。一人で頑張っている一人親方は、一人親方の労災保険に加入しておきましょう。
目次へ戻る