一人親方のみなさん。労災保険に加入していますか?一人親方が現場で働くために必須となった一人親方の労災保険。
東北労災事務室にいると、労災保険に加入していないと現場に入れられないと言われたと慌てて加入する方がいらっしゃいます。
労災保険は現場で仕事をするためのパスポートのようなもの。
でも、労災保険に加入する義務があるのは、現場で働く人にとってメリットがあるからなんです。
もちろん無事故ならそれが一番いいことです。
万が一怪我や病気になった時…本当に加入すべき理由は労災保険の補償内容にあるんです。
労災保険の補償内容は大きく分けて三つ
1.自分や家族を経済的に守るため
2.安心して治療や療養をするため
3.依頼主や元請けやお客様を守るため
会社勤めのサラリーマンは、社会保険での保障がとても手厚いのをご存じですか?勤務中の事故や怪我はもちろん、病気になっても本人の治療費に加え生活費の保障もあるし…
万が一亡くなった時は、家族に遺族年金が出るし…
それに比べると、一人親方さんや個人事業主は、もしも働けなくなった時の保障がと~~~っても薄いんです…
ちょっと難しい話になってしまうのでここでは触れませんが、その薄い保障を何とかするのが一人親方のための労災保険です。
「現場で事故が起きて、仕事ができない!…」
そんな時、労災保険に入っていなければ治療費はもちろん自費負担となります。国民健康保険は使えません。取引先の会社も出してくれません…
逆に労災保険に入っていれば、そこから治療費や生活費の一部をまかなうことができるのです。
ただし、事故が起きてからの加入ではこれらのお金はおりません。あくまで加入している最中の事故や怪我についての保障ですので、「現場に入る前に労災保険に加入する」ことが求められるのです。
労災事故発生!一人親方はどうなる?
ここからは、実際に事故が起きて怪我をしてしまったとき、あなた(一人親方さま)と労災保険がどうなるのかを簡単に見ていきましょう^^
ケガしたところが痛い
ふざけるなっ!と怒る方いたらすいません。
でもこれ後々大きい事になる可能性があるんです。だって、ケガすりゃ痛いに決まってる。痛いのを我慢して仕事をする事ができれば良いんですけど、痛いんですから100%の能力で仕事なんで出来るわけが無いんです。
そもそも「痛い」という感情は脳みそが「体に危険が及んでるから休め」と命令しているんですね。ペットを飼っていらっしゃる方はわかると思いますが、動物の本能で、体に変調をきたした時やケガをした時は、じーーーと休む。本当はこれが一番ですね。
無理して働くのは禁物です★
必ず病院に行く
さあ、病院へ行きましょう!我慢しても意味が無いですよね。早く治療して仕事に復帰しないとお金が稼げないし経済的にも生活が苦しくなってきます。
まず、病院に行ったときに受付で「労働中のケガです」と伝えてください。
後々労働中のケガだったというのが発覚すると大変なことになりますし、健康保険では「30%」は自分で負担になりますよ。労災保険は「自己負担0」です。
ただし、国が言っている「社会保険適用内」である事です。個室に入りたい!これはダメ。あとは、テレビを見たり、先進医療や自由診療は自己負担ですね。このような診療を受ける際には説明をされますからわかると思います。
あっ!入院中の食費は、食べようが食べなかろうが、通常は1食460円。1日3食ですから、460円×3=1,380円/日となります。
大きい事故!手術と入院が待っていた
大けがだったらどうなるか。
建設現場で膝の大けがをしてしまったとします。救急車で搬送され、検査の結果、入院と手術と治療が必要となったとします。
例えばですが、人口の膝の関節の置き換えが必要と診断されると・・・
手術名:人工膝関節置き換え術
入院日数平均:16日
手術費用:1,880,000円
それだけでは済まないですよね。
①初期入院費費用
②治療費用
③薬費用
④差額ベット費用
⑤食事代
etc・・・
ケガや病気(以下ケガに統一)によっては手術や入院が待っています。これも、労災保険に加入していないと100%自己負担って恐ろしいですね。
現場での事故でだと、国民健康保険証を病院に出しても受理してもらえません。
万が一健康保険証を使ったとしても、労災事故なのがわかった時点で「労災保険」への切り替えが始まります。
そこで労災保険に加入していなかったら!!そうです…100%負担となります。
自分でお金を用意しなければならなくなります。
何度も繰り返しますが、労災の事故や怪我・病気には国民健康保険は使えないのです。
そこで労災保険に加入し、そこから医療費などをカバーします。
万が一の時の労災保険は、手術代・入院費など全てカバーしてくれますよ。自己「負担ゼロ」なんです。
注意:高額療養制度は使えない
確定申告をしている一人親方さんはご存じかもしれませんが、国民健康保険には「高額医療制度」という、うれしい制度があります。
これは、治療について、一定額以上のお金がかかった場合、高すぎる部分は国が払ってくれますよ。
という制度です。
ただし、これって国民健康保険と社会保険の枠の中の特典なんです…実は労災事故には使えません…
だから労災保険へ加入していない方は、100%自己負担になります。怖いですね。
では「高額療養制度」を少し詳しく説明してみますね。
簡単に言うと、仕事中以外の日常生活でケガや病気になった時に使える制度です。
どれだけお金がかかっても病院へ払う金額は年間所得によって、国が補償しますよっていう「国民健康保険」の制度です。
例えば、年間所得が210万円を超えて600万円以下の方は
・80,100+(医療費−267,000円)×1%
更に12カ月以内に3回以上制度を受けた方は、4回目からは44,400円だけです。
つまり、1ヵ月で300万円かかったとする。上の計算式にあてはめて計算すると
・80,100円+(3,000,000円-267,000円)×1%=107,430円/1ヵ月
となります。
この年間所得は確定申告で決まるわけですが、会社員(サラリーマン)と一人親方とではちょっと違うので、気を付けてくださいね。
もう一度言いますが、一人親方は労働中の事故での入院や手術、治療は一人親方の労災保険を使います。
仕事中のケガは「労災保険」しか使えません。「健康保険証」を出したら・・・法律違反なんです。びっくりですね。
つまりこういう事
仕事を原因とするケガや病気の治療 ⇒ 労災保険を使用しなさい
日常生活におけるケガや病気の治療 ⇒ 健康保険を使用しなさい
法律で決まっているんです。
再度申し上げますが労災保険に入っていないと「100%自己負担」という恐ろしいことが起きてしいます。
国保である「高額療養制度」は使えませんのでお気をつけください。
退院したはいいけれど・・・
やっと病院を出られました!良かったとはいかないのが一人親方さん。そうです。自宅療養が待ってます。通院が待ってます。そのお金はどこから捻出するのか?貯蓄からですか?ローンですか?いつかは支払いしなければなりませんよね。そうなんです。退院後も治療や療養が待っていますから、やはりお金がかかります。
先ほど述べた通り、「国民健康保険」は使えないんです。
労災保険に加入していないと、全額負担というこれまた恐ろしい事実が待っています。
お金を相当稼いで、貯蓄もあるから大丈夫という方。
それは間違いではないかもしれませんが、そのお金を払うぐらいなら、加入料金を払っていた方が断然安く済みます。だって労災保険が払ってくれるから^^v
会社員の方は、労働保険は強制加入で会社が大体ですが折半で払ってくれます(労災保険と雇用保険)なので、傷病手当金をもらったり、障害年金をもらったり、休業補償がかなり手厚い。
一人親方や個人事業主は、そのような補償はありません。
労災保険に入っておけば、労働中のケガなどの時にどうしても療養が必要になった時には国が補償してくれますから、安心ですね。
「おれは大丈夫!」はそろそろやめませんか?
今まで説明してきた通り、労災事故が起きたら金銭的にとても大変です。
そろそろ「自分だけは事故に合わない・けがをしない!大丈夫!!」っていう根拠のない自信を持つのはやめましょう。
安全・無事故で現場を終わらせることが第一条件ですが、そうでなくなった時助けてくれるのが「一人親方さまのための労災保険」です。
入っておけば医療費の負担はゼロ…考えてみれば国民健康保険や社会保険よりいい待遇ですよね。
東北労災では、お一人親方さまが無事故で安全に一つ一つの現場を終わらせることを心から願っています。
それに誰でも怪我や病気をするつもりで現場に入ったりしません。だから労災保険にお金を払うのは本当に気が進まないことだと…事務局も承知しております…
ただ、現実として東北労災一人親方部会でも、すでに労災事故は発生しています。事故が起こった時、労災保険の手続きをするのも私たちの仕事ですが、ほんとに「他人事じゃないな…」と毎回感じます。
だって…医療費って高いんですもの!しかもその間働けないというマイナスも待っている…
労災保険が現場へのパスポートである理由は、怪我や病気へのお守りだからなのです。
まとめ
労災保険に入らなければならないのは、一人親方の仕事中に起きたけがや病気に関して国民健康保険が使えないからなんです。
ということは、その医療費は全額自己負担になる…労災保険に入っていれば、仕事中の怪我や病気は医療費が全額出してもらえる…
この差は大きいですよね。
それではもう一度、一人親方さまが労災保険に入る理由をおさらいしてみましょう。
自分や家族を経済的に守るため
労働中に起きたケガで仕事ができなくなると大変です。
労災保険は、休業給付の金額を決めて加入ができます。万が一、仕事ができない状態になっても医療費以外に、国からお給料みたいにもらえますから安心ですね。(※日額給付金のことです)
安心して治療や療養をするため
入院費用や治療や薬代も、国が全額支払ってくれます。という事は、自己負担が0円。これ凄くないですか?
一人親方は自分一人で頑張っているんだから、何かあった時もこれで安心ですね。
依頼主や元請けやお客様を守るため
一人親方の貴方が、労災保険に加入していないで事故を起こしたら、依頼主や元請けさま、強いてはお客様にも責任が回ってきます。(詳しくは別の章で説明)
そうそう、一人親方が仲間の一人親方へ仕事を頼んでも、この関係は必然的に出来ていますから責任が生じます。こんな難しい事、考えているよりも労災保険に加入しておけばいちいち気にすることもなく、仕事に集中できます。
東北労災は、一人で頑張っている親方さまを応援しています!
副理事 労災保険コンサルタント
大学卒業の後、XEROX(現富士フィルムビジネスイノベーション)へ入社。新規開拓営業として活動する。38歳の時に人生一度切りとの思いから起業し独立。IT、建設、金融、海事から伝統工芸など多種多様な事業展開。SNSが広まる前から興味を持ち、各業界、特に士業関係からセミナー依頼を多数受ける。現在は政府から承認を受け、特別加入団体を立ち上げ労災関連の相談から事務処理業務全般を行っている。
特技は山菜や木の実を見つけること。アケビは大好物。キノコは好きだが、なぜか椎茸は未だに食べられないのが悩み。
里山に入り山菜取りに夢中になりすぎて遭難しかけ、警察沙汰になったことも。釣り好き花好き動物好き。お酒は少々楽しむ程度。
一人親方は法的には労働者ではないため、労災保険に加入できません。
特別に加入できるようにした制度が特別加入の労災保険。労働者ではない一人親方を、労働災害から守る唯一の手段であることを広めていきたいと思っています。