はじめに

一人親方の方々は、自身の経験と技術を活かし、自由な働き方を選び活動しています。
しかし、自由な働き方をする「自由」とは、反対に自身の様々な責任が重くのしかかるのも事実です。
特に労働安全衛生法においては、一人親方自身が注意すべき点を理解し、適切な対策を講じることは、一人親方としての働き方を支える鍵となります。

この記事では、労働安全衛生法に基づく一人親方の義務と、日常の作業において注意すべきポイントについて解説します。
一人親方として働く上で不可欠なものですので、ぜひ参考にしてください。

労働安全衛生法とは

労働安全衛生法とは、労働者の安全と健康を確保するために定められた法律です。
通常、この法律は従業員を雇用している事業者に適用されますが、近年の法改正や社会的な要請により、一人親方にもその対応が求められています。

一人親方とは、従業員を雇用せず、自らの技能、技術や経験を使用し、労力を提供する「個人事業主」のことを指します。
建設業などの危険が伴う作業が多い職種で活動する一人親方が多く、安全管理の必要性は高まっています。
特に労働災害や健康リスクに対して適切な対策を講じないと、重大な事故や健康被害に直面する可能性が高いといえるでしょう。

安全配慮義務とは

一人親方として働くことは、時間や業務選択の自由があることの反面、個人事業主としての自己責任が求められます。
しかし、個人事業主だからといって、安全に対する配慮を怠ってよいわけではありません。
特に建設業などの業種においては、リスクの高い職種ですので「安全配慮義務」が非常に重要です。

万が一の時の一人親方のリスク

  • ケガや病気の時の治療費などによる経済的なリスク
  • 仕事ができない状態の時の経済的なリスク
  • 障害が残った時の事業継続不能による就労リスク
  • 経済的不安によるストレス過多のリスク

事業を自ら行う事業主は、法律的な観点から「労働者ではない」ため、労働者(会社員など)と違い、国は守ってくれません。自分の身は自分で守ることが必須となります。

就労不能図

安全配慮義務要約

安全配慮義務とは、労働者や作業員の安全を確保するために必要な配慮をする義務のことを指します。
労働基準法や安全衛生法などの法律で規定されていますが、一人親方にもこの義務は適用されます。
一人親方は、事業主でありながらも、労働者(一人親方の労働者性)でもあるため、自分自身に対しても、安全配慮義務を果たす必要があります。

なぜ安全配慮義務が必要なのか?

一人親方は、業務中に起こり得るリスクを自分自身で管理しなければなりません。
業務災害が発生した場合、自分自身が直接的な被害を受けるだけでなく、業務の継続が難しくなる可能性もあります。
また、安全管理が徹底されていないと、信用を失うリスクがあります。
そのため、日常的に業務上は特にリスクを把握し、適切な対策を講じることが必要です

業務災害時の責任の所在はだれにある?

仕事を依頼した方にも安全配慮義務責任が生じます。
例えば、一人親方が自分の仕事仲間に仕事を依頼し場合も、仕事を依頼した一人親方にも安全配慮義務責任が生じます。
いくら仲が良い仕事仲間であっても、お互いに労働安全衛生法並びに安全配慮義務はありますので、気持ちよく仕事をするためにも、お互いが安全に対し声掛けしあうことが重要となります。

建設業請負安全配慮義務

一人親方が注意すべき労働安全衛生法のポイント

一人親方として、労働安全衛生法において注意すべき点を挙げていきます。
これらを理解し、日々の業務に活かすことで、業務上のリスクを最小限に抑え、安全で健康的な働き方を実現することが可能です。

労働安全衛生法と安全配慮義務を守ることは

自分を守るということ。

自分を守るということは

元請会社や仕事仲間、ご家族を守るということ。

安全に仕事ができる状態を作っていきましょう。

1 安全装備の適切な使用

安全装備の使用は、一人親方がまず最初に注意すべきポイントです。
労働安全衛生法では、特定の作業において安全装備の使用が義務付けられており、一人親方も例外ではありません。
例えば、以下の装備が該当します。

  • 安全帽: 高所作業や重機が関わる現場では、安全帽を常に着用することが求められます。頭部を保護するためには欠かせない装備です。
  • 安全帯: 高所での作業中に転落を防ぐための安全帯は、必ず使用しましょう。作業前にしっかりと装着し、固定することが大切です。
  • 保護具: 目や耳、手を守るための保護具も、作業内容に応じて適切に使用する必要があります。特に、飛散物が発生する作業や騒音が大きい環境では必須です。

安全装備を適切に使用することで、作業中の事故や怪我を防ぐことができます。
日常的に装備の点検を行い、必要に応じて交換や修理を行うことも忘れずに行いましょう。

2 健康管理の重要性

一人親方は、業務の全てを自分で管理するため、健康管理に対する意識も高く持つ必要があります。
特に過酷な労働環境で働く場合や、長時間労働が続く場合には、以下の点に注意が必要です。

  • 定期健康診断の受診: 一人親方も定期的に健康診断を受けることが推奨されています。
    生活習慣病や過労による健康リスクを早期に発見し、対策を講じることが可能です。
  • 十分な休養の確保: 長時間労働や過密なスケジュールは、体力を消耗させるだけでなく、精神的なストレスも増加させます。
    適切な休養と睡眠を確保し、定期的にリフレッシュする時間を作ることが重要です。

健康管理は、自らの働き方を見直し、持続可能なペースで業務を行うための基盤です。
特に繁忙期やストレスの多い時期には、意識的に健康状態をチェックし、必要な対策を講じるよう心がけましょう。

3 作業環境の整備

一人親方は、自らの作業環境を整える責任があります
安全で効率的に作業を行うためには、作業環境の整備が欠かせません。
以下の点に注意して作業環境を整備しましょう。

  • 作業スペースの整理整頓: 作業場所が整理整頓されていることは、安全作業に直結します。道具や材料は使いやすい場所に保管し、不要な物は速やかに片付けましょう。
  • 安全な電気配線: 電動工具や照明などの電源が安全に配線されているか確認し、感電や火災のリスクを減らすように努めましょう。

また、作業場所に応じて、周囲の安全確認や危険物の除去なども徹底することで、リスクをさらに低減できます。

4 リスクアセスメントの実施

リスクアセスメントを日本語に訳すと、「リスク=危険や危険度」「アセスメント=評価や査定」、つまり危険度を評価する、という意味です。
作業前にリスクを評価し、必要な対策を講じる過程のことです。
一人親方として活動する際には、自らが行う作業にどのようなリスクが存在するのかを常に把握し、適切な対応を行うことが求められます。

  • 作業前のリスク評価: 新しい作業や現場での仕事を始める前には、どのような危険が潜んでいるかを評価し、必要な対策を講じることが大切です。
  • 危険が伴う作業の慎重な実施: 危険度が高い作業については、追加の安全措置を検討し、必要に応じて他の専門家に助言を求めることも考慮しましょう。

リスクアセスメントを通じて、リスクを事前に把握し、適切な対策を講じることで、事故の発生を未然に防ぐことが可能です。

5 法令遵守と情報の収集をする

一人親方として活動するには労働安全衛生法や安全配慮義務などに関連する規制を遵守することが、不可欠です。
最新の法令や規制に関する情報を常に収集し、これに従って行動することが重要です。

  1. 定期的な情報を更新: 労働安全衛生に関する法令、規制は、社会や時代の変化に応じ、定期的に改正されることがあります。最新の情報を常に収集し、日々の業務に適用することが重要です。
  2. 必要な届出や申請などの確認: 業務内容や業務遂行地域によっては、特定の届出や許可が必要な場合もあります。これらを確認し、必要な手続きを適切に行いましょう。

法令遵守は、一人親方としての信頼性を高めるためにも最も大切です。
さからないことがある場合は、専門家に相談し、適切な対応を行うよう心がけましょう。

6 メンタルヘルスのケアを忘れずに

一人親方は特に、孤立しがちで、精神的負担が増すことが多々あります
自分のメンタルヘルスにも注意を払い、必要なケアを行うことはとっても大切です。

  • ストレスの管理: ストレスを過多に感じた時は、リラックスできる時間と空間環境を作るか、専門家(医師や産業カウンセラーなど)に相談することを検討しましょう。
  • サポートネットワークの活用: 困難な状況に陥った際には、同業者や専門家、第三者へサポートを求めることが大切です。
相談

事業主は特に、孤独になりがちです。

あまりストレスを溜めないで、専門家に相談しましょう。

相談相手で一番重要なことは

第三者である

もしくは

現状の仕事と関係性が無い人
です。

メンタルヘルスを適切に管理することは、安定した事業運営を可能にすることです。

まとめ

一人親方として活動するには、高い自己管理能力と安全意識が求められます。

労働安全衛生法に基づく規定をしっかりと理解し、日常の業務において適切な対策を講じることで、自らの安全と健康を守りつつ、長期的に安定した事業を続けることができます。を実現することができます。

安全装備の使用、健康管理、作業環境の整備、リスクアセスメントの実施、法令遵守、そしてメンタルヘルスのケアを意識的に行うことで、リスクを最小限に抑え、安全で健康的な働き方を築きましょう。

LPファーストビュー最新

東北労災一人親方部会では、労災申請の書類作成を無料で代行しています。
申請書類は非常に煩雑で書くことも多いので、ケガや病気で苦しんでいる状態の時にきちんと書き上げるのは難しいもの。
書類作成はすべての団体や組合で無料というわけではありません。
また、提出する書類の種類によっては、有料としているところもあるようです。
ですから、働けないから労災保険の補償を受けるのに、お金を払わなくてはならないという悪循環に陥る可能性も否定できません。
労災事故が発生したら、まずは、加入している団体や組合に、すみやかに労災事故報告を行いましょう。

東北一人親方部会は、労災事故報告の連絡が入れば即座に対応しています。
専門家がスピーディに、しかも「無料」であなたをサポートします。

万が一に備えるなら、東北労災一人親方部会で安心安全なサポートを受けましょう。