はじめに

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守るために制定された法律です。
企業や元請け業者にとっては法的義務として遵守が求められる大変重要な法令です。
令和5年度に、この法律に基づく省令が改正され、企業や元請け業者は新たな基準や要件に対応する必要があります。
ここでは、最新の省令改正について詳しく解説しています。
企業や元請け業者が取るべき対応策、一人親方に関連する改正内容について説明していきます。

労働安全衛生法とはなに?

労働安全衛生法は、昭和47年(1972年)に制定され、労働者の安全と健康を確保するための法律です。
この法律は、職場の環境改善や安全対策の実施を通じ、労働災害や職業病の発生を防ぐことを目的としています。
また、企業や元請け業者は、労働従事者の健康管理や安全教育の実施が義務付けられています。

省令改正の概要

労働安全衛生法に基づく省令は、時代の流れによる労働環境の変化や、新たなリスク要因に対応するため、定期的に改正されますので、常に注意が必要です。
最近の改正では、以下のようなポイントが強調され制定されています。

  • 職場のメンタルヘルス対策強化
    職場におけるストレスチェック制度の見直しが行われ、企業には従業員のメンタルヘルスケアに対するさらに積極的な取り組みが求められています。
    企業はストレスチェックの結果に基づくフォローアップや、専門家(医師やカウンセラー)によるカウンセリングの提供が必要になります。
  • リモートワークにおける安全管理の明確化
    コロナ禍を契機に普及したリモートワーク。リモートワーク環境における労働者の安全と健康管理を強化する必要があります。
    これらには、適切な作業環境の整備や長時間労働の防止が含まれています。
  • 高年齢労働者に対する労働環境改善
    高齢化社会に対応するため、高年齢労働者の安全と健康を確保するための措置が追加されました。
    高年齢労働者に対しては特に、体力や健康状態に応じた業務の割り振り、無理のない作業環境の提供が求められています。
  • 化学物質管理の強化
    有害化学物質の取り扱いに関する規制が強化され、企業はこれらの物質に関するリスク評価・適切な防護対策を徹底することが求められています。
    特に、新たに指定された有害物質の使用に際しては、事前にリスク評価を行い、その結果に基づいた対応策を講じる必要があります。

労働安全衛生法・安全配慮義務の責任の所在

労働安全衛生法と安全配慮義務を負うものは、仕事を依頼した元請(企業や個人事業主、親方や一人親方すべて)となります。

会社の代表者(経営者)

企業全体の安全配慮を統括する責任があり、労働者の安全と健康を守るために必要な環境を整備する義務を負います。

人事部門や総務部門の責任者

人事部門や総務部門の責任者も、安全配慮義務を負います。労働者の労働環境やメンタルヘルスの管理に関与し、必要な措置を講じる責任があります。

現場監督や現場管理者

建設現場など、労働者が実際に働く場所での管理責任を持つ人々も、安全配慮義務を負います。これには、作業手順の安全性確認や適切な指導、危険を回避するための措置などが含まれます。

4.・労働者自身

法的には元請けが安全配慮義務を負いますが、労働者自身も自己の安全と健康を守るための協力義務があります。例えば、安全装置を適切に使用すること、現場のルールに沿って業務を行うこと、危険な状況を常に報告することが求められています。

建設業請負安全配慮義務

安全配慮義務を果たさない場合、安全配慮義務違反として法的責任を負う可能性があります。
業務災害が発生し、法的にも適切な安全対策を怠っていた場合、労働者または労働者性があるものから、損害賠償を請求されることがあります。
また、評判が損なわれるリスクがあり、長期的な経営に悪影響を及ぼす可能性もあります。
常に、業務上の安全には配慮が必要、ということが求められています。

建設業の一人親方に関する改正

特に注目すべきは、一人親方(個人経営者や労働者を雇用していない一人社長など)の安全衛生管理に関する規定の強化です。

これまで、労働者を雇用していない一人親方は労働安全衛生法の対象外とされることが一般的でしたが、最近の改正では、一人親方への労働に従事する際の、安全確保にも注目が集まっています。

一人親方は、建設業や運送業などの現場で独自に仕事を行うケースが多く、労働災害のリスクが高い職種が多いことから、以下のような改正が行われました。

  • 安全教育の実施
    一人親方も、従業員と同様に安全教育を受けることが推奨されます。
    特に高リスクな作業を行う際に、事故や災害を未然に防ぐための知識やスキルを向上させるためです。
  • 特別加入への加入促進
    公営保険の特別加入制度(労災保険)への加入促進や、現場での特別加入の確認です。
    業務災害が発生したときの一人親方の経済的負担を軽減するために、重大な事項です。
    ただし、特別加入の証明書(各種団体発行)の有効期限が問題ないとしても、未払いや本人の事情により実際には、労災保険未加入となっている場合があります。
    元請側は、本人が詐称していたと主張しても、加入確認義務を怠ったとされる場合がありますので、注意が必要です。
  • 安全装備の義務化
    一人親方に対しても、適切な安全装備の使用が義務付けられました。
    具体的には、安全帽や安全帯、保護具の使用が徹底され、これらを怠ることで発生した災害については、一人親方本人の責任が問われる場合があります。
  • 健康診断の推奨
    一人親方は、自らの健康管理にも責任を持つ必要があります。
    これに関連し、定期的な健康診断の受診が推奨されています。
    特に過酷な労働環境で働く一人親方についての健康診断は、重大な疾患の早期発見につながります。

企業が取るべき対応策

省令改正に伴い、以下のような対応を行うことで、労働者および一人親方の安全と健康を確保し、法令遵守を図ることが可能です。

定期的な教育と訓練の実施
省令改正に対応するためには、まず従業員や協力会社の一人親方に対して最新の法令や規制に関する教育を行うことが重要です。
特に、安全管理に関する新しい要件やリスク評価の方法について、定期的な研修を実施することで、従業員の意識向上を図ります。

リスクアセスメントの強化
企業は、職場の安全リスクを定期的に評価し、その結果に基づいて適切な対策を講じる必要があります。
一人親方を含む全ての労働者に対して、安全な作業環境を提供することが求められます。

外部専門家の活用
メンタルヘルスや化学物質管理など、専門知識が求められる分野においては、外部の専門家やコンサルタントを活用することが効果的です。
また、一人親方に対しても、安全管理専門家によるアドバイスや支援を提供することが推奨されます。

労働者および一人親方の意見を反映した職場環境の整備
労働者や一人親方が職場環境の改善に積極的に関与できるよう、意見を反映させる仕組みを構築することが重要です。
これにより、実際の労働環境に即した安全対策が実現しやすくなります。

継続的な改善活動の推進
企業は、労働安全衛生に関する取り組みに対し、継続的な改善活動を通じて、常に最新の状況に対応できる体制を整える必要があります。
定期的な監査やレビューを行い、改善点を見つけ出し、迅速に対応することが求められます。

特別加入への加入促進
特別加入制度の労災保険の知識習得や加入促進を図り、万が一業務災害が起きた時に、一人親方を経済的貧窮から守ることができます。現場に入る際には、確実に加入しているかをチェックし、名簿化することが重要となります。

5. まとめ

労働安全衛生法に基づく省令改正は、安全配慮義務とともに、企業や元請にとって法令遵守の義務を果たすだけでなく、現場で働く方々の安全と健康を守るために大変重要です。
これらの改正に迅速かつ的確に対応することで、安全で健康的な職場環境を提供し、モチベーションや生産性を向上させることも可能です。

また、省令改正への対応は、社会的責任(CSR)の一環としてもとても重要な位置付けを持っています。
法令遵守と労働者、一人親方の健康管理をしっかりと行うことで、信頼性を高め、長期的な経営を支える基盤を築くことができるでしょう。

労働安全衛生法の改正動向を注視しながら、適切な対応を続けることが求められています。

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