一人親方とそのご家族を支える療養補償給付制度をわかりやすく解説します。

業務上の事故やけがなどにより被災した場合に、最初に申請される労災保険の給付制度です。

業務中の災害による治療費などには、国民健康保険は適用されません。
業務災害で本来は労災保険を使用しなければならないのに、健康保険を使用してしまい、そのことが発覚すると100%の返納を求められますので、適正な保険制度を利用しましょう。

会社に雇われている従業員は、労災保険に必ず加入すること(強制加入制度)になっており、その保険料は全額会社が負担しています。

反対に、フリーランスや自営業といった一人親方として働く方々は、労災保険の特別加入が義務ではない(任意加入制度)ことから、加入していないケースも少なくありません。

一人親方は会社員とは異なり、業務中に事故や災害が起きても「経済的な補償や支援を受けられず」、自分自身で全てを背負うことになります。
特別加入の労災保険は加入が欠かせない制度と言えるでしょう。

参照:健康保険法第55条
業務災害による傷病については、健康保険の適用対象外
参照:国民健康保険法 第56条 第1項
労災保険が適用される場合には、国民健康保険よりも労災保険が優先され、国保は適用対象外

目次

  1. 療養(補償)給付とは
  2. 保険給付の内容
  3. 労災保険未加入のときの医療費は「全額負担」
    1. カッター壁紙を補修中に掌を切り5針縫った
    2. 脚立から足を滑らせ約1.5mから落下し、下にあった花壇の淵に頭部強打
    3. 壁材を現場へ運搬中転倒した
  4. 療養(補償)給付のまとめ

療養(補償)給付ってなに?

仕事中や通勤中の災害によって負ったけがや、病気の治療に対して支給される補償給付です。

業務災害の定義は、労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づいて定められています。

「業務上の事由により労働者が負傷し、又は疾病にかかったときは、療養補償給付を行う。」
労働基準法 第75条以下にも、使用者の補償義務が規定

業務に従事している最中に、避けることができずに(偶発性・突発性という)発生した負傷、疾病、傷害、死亡などの事を指します。

【必要な要件】

①業務遂行性

労働者が使用者の管理・指示のもとで働いている状態であること。

②業務起因性

業務が原因となって、災害(事故や病気)が発生したと認められる合理的な因果関係があること。

一人親方の場合はどうでしょう。
①は、単に元請けが存在することを示しており、「指揮命令下にある」という状況とは区別されます。
②は、仕事が原因で災害が発生したケースであり、その災害が仕事に関連して起きたことが明らかであることを意味します。

そのため災害の影響でけがをしたり、病気の治療が必要になった場合、医療機関でかかる費用(治療費、入院費、薬代、手術費、入院中の食事代など)は、原則して本人の代わりに政府が負担します。
そのため、被災された方の自己負担は基本的には0円となります。

これが、労災保険で定められている「療養(補償)給付」の補償給付制度になります。

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基本的に0円と表現しているのは、自己都合で部屋を個室にしたり、保険適応外の治療を希望したりした場合は、その差額を支払う必要があるかです。

保険給付の詳細

『給付』という言葉を使うと、お金が貰えるように感じられるかもしれませんが、これは必ずしも療養給付金が支給されるという意味ではありません。

業務上の災害中に負ったケガの治療費については、ご本人に代わり、政府が全額負担します。

業務上の災害によって負った傷病については、医師が「治癒した」と判断するか、あるいは「これ以上治療を続けても改善が見込めない」として症状固定と認めるまでの間、治療費は全額補償されます。
そのため加入者ご本人は経済的な不安を抱えることなく、安心して治療に専念することができます。

また、この給付は加入時の給付基礎日額に関係なく、すべての加入者が対象となります。

ただし、ご本人の希望で「自由診療」「個室」「先進医療」などを利用された場合には、それにかかる費用の差額は自己負担となります。

【実例あり】労災でケガをしたら治療費はいくらかかる?外来・入院・手術費用の目安

前述のとおり、業務災害(労災中の事故など)に遭った場合には、その治療などに対して政府から給付が行われる制度が、労災保険の療養補償給付制度です。
労災保険に加入していれば、仕事中や通勤中のケガの治療費は原則全額補償されます。

では、政府の給付制度を使わないと、実際にはどのくらいの費用が発生しているのか、見てみましょう。

ここでは、東北労災一人親方部会で実際に起きた3つのケガの事例をもとに、
労災保険未加入の場合に実際にかかってしまう医療費を紹介します。

例1:木片に腕をぶつけて切り傷(外来治療)

初診料:3,000円
検査費:5,000円
縫合処置費:15,000円
抜糸費:4,000円
処方箋料:3,000円
合計:約30,000円

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外来治療のみでも、縫合や検査が必要になると数万円規模の費用がかかります。

例2:足場から落下、頭部強打(脳震盪+頭蓋骨骨折/入院14日)

入院費(14日):735,000円
入院食事費:14,000円
手術費(頭蓋骨骨折整復術):1,200,000円
投薬費:200,000円
検査費(CT・MRIなど):200,000円
合計:約2,349,000円

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頭部外傷は手術・検査・入院が必要となり、200万円を超える費用が発生します。

例3:ダンプ作業中に指を挟み壊死 → 指不全切断(入院20日)

入院費(20日):1,050,000円
入院食事費:20,000円
手術費(指切断・形成再建):900,000円
投薬費:250,000円
検査費:300,000円
処置費(壊死部除去など):150,000円

合計:約2,670,000円

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指の切断手術など重度の外傷は、入院・手術・投薬費を含めて250万~300万円前後になることがあります。

労災保険がなければ高額な自己負担に

労災保険に加入していれば、これらの医療費は原則全額補償されます。一方、未加入の場合は高額な自己負担になる可能性があるため、特別加入制度を利用して備えることが重要です。

療養(補償)給付に関するまとめ

業務中の災害(労災事故など)によってケガや病気をした場合は、自己負担なくで治療を受けることができます。一方で、仕事に関係のない日常生活の中で発生したケガや病気については、「国民健康保険」や「健康保険組合」などの公的医療保険を利用して治療を受けてください。

とはいえ、仕事中と一般生活の時間配分を考慮すると、災害時傷病を負うリスクは、仕事中の方が圧倒的に高いといえます。

もしもの業務災害に対して、自分で治療費を負担出来るだけの蓄えがある方は別ですが、そうでなければ特別加入の労災保険への加入は非常に重要です。

30年間、約40,000円の加入料金を支払い続けたとして、合計の支払金額は「1,200,000円」になりますが、このお金は、仕事を遂行するためのお金「必要経費」と思えばいかかでしょう。
実際に、確定申告時に「経費算入」できることが認められている列記とした「必要経費」です。

費用対効果を考えると、やはり支払う方が安心感がありますよね。

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東北労災一人親方部会では、労災保険にかかわるすべての申請書類作成を無料で代行しています。
加入や脱退においては「特別加入承認団体」を通じ申請します。
ですから、ほとんどの労災保険取扱団体では、申請書類の作成を代行しています。
特に、労災事故が発生したら、加入している団体や組合にすみやかに労災事故報告を行いましょう。
東北労災一人親方部会は、加入から脱退、労災事故報告の連絡が入れば即座に対応しています。
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