今回は現場の元受様や依頼主様に関係のあるお話です。

工事現場での事故は一人親方だけの責任でありません。

事故が起きたときは元請け様や依頼主様にも責任が問われてしまいます。

ここでいう「責任」とは何かあった時の保障=お金のことです。

どんな人でも、事故は起こさないように気を付けてお仕事されているものですし、党労災の事務局もそんな現場の方々に頭が下がります。

けれど、事故が起きた時のお金って…大金です。

現場入りする「ご本人=一人親方さま」だけではなく、「受け入れる側の依頼主様」も、現場に人を入れるときには必ず労災保険への加入を義務付けして、加入の有無を確認しましょう。

工事現場で作業員がケガをした。さて誰がその責務を負うのか?

例えば…

建築現場で内装仕上げ工事の一人親方が、脚立に乗り、壁紙を貼りなおしていた時に落ちてしまい全身強打!救急車を呼んで、入院。幸い重症ではなかったとしても…
現実が待っています。保障の話は必ず出ます。そう、経済的な現実と法律的な現実です。

では、依頼主様側にはどんな責任や義務があるのでしょうか。

1.安全配慮義務

作業現場や工事現場で作業をさせる上で、安全に仕事ができる環境を整えていたかを問われる法律です。

以下民法
労働契約法第5条
(労働者への安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

ここでいう「使用者」とは、簡単に言いますとその仕事を依頼したものを言います。つまり「元請け会社」「依頼主」です。さらに、一人親方が仲間の一人親方へ仕事を頼んだらすでに「使用者」となるんですね。

いやいや、労働契約はしてないよ、と書面で契約をしていないから・・・これは通用しません。なぜなら口約束も「口頭契約」として成立するんです。

さらに「業務委託」でも同じことが言えます。

業務委託であっても、その職場で仕事を依頼した以上、この法律は適用される場合がありますからご注意ください。

2.使用者責任

以下民法
民法715条第1項
ある事業のために他人を使用するものは、被用者その事業の遂行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うものとする。


ん~法律用語って難しい・・・
ここでいう使用者は、前に述べた通り「元請け会社」「依頼主」です。
一人親方へ労働を依頼(委託)すれば、使用関係が成立します。つまり、元請けと下請けの関係のようなものです。元請けと下請けの関係がある限り、元請けも使用者責任を負うべきとされています。

ここでいう「第三者」とは何でしょうね?例えば、同一作業内に一人親方が2人いたとします。

その方たちをAさん、Bさんとします。

Aさんの不注意で、Bさんがケガをしてしまいました。責任の所在は?

そうです。Aさんだけでなく、使用者にも責任訴追があるという事。これを、共同不法行為と言います。ただし、Bさんにも過失があった場合には、過失の相殺により処分されることがあります。

このように、使用者が依頼した仕事をしているAさん。そしてBさん。いくら使用者が「私には関係ない」と言っても、いくらAさんの不注意であっても、Bさんの事を経済的にも守っていかなければならないというわけです。

3.その他色々

上記2つは、わかり易いものとして、また、直近の行為として説明しました。

仕事は、一人でできるものではなく、「共同作業」によって完成させることができる「行為」です。

ですから、使用者は、使用人を作業させる場合には細心の注意を払わなければならないという事になります。何でもかんでも、使用者が(元請け・依頼人)責任を取るのか!と、お思いでしょうが、よく考えれば当たり前なんですよね。
船長さんはどうでしょう?

いくら船員がミスをしても、お客様が理不尽なことを言って事故が起きても、全て責任は「船長」にあります。船が沈んでも、お客や船員を全員助けてから自分は最後ですね(国際法で決まっています)

例えば、会社の社長。
いくら社員が不祥事を起こしても、お客様のクレーム対応が悪くっても、最後は「代表取締役」がお詫びしないといけません。私は知らなかったとは言えないんです。

こう思えば、使用者は最大の責任を負うという事はお分かりいただけたかと思いますが、どうでしょうか。

仕事を守る仲間を守るための政府労災保険

さて、今まで説明してきた通り、使用人は全ての責任は負わないとしても(裁判事例)100%逃れられるという事は無いでしょう。

最近では、大手ゼネコンや工務店、ハウスメーカーは一人親方の労災保険に関し(特別加入制度の労災保険)加入するように徹底するようになりました。

労災保険へ加入している一人親方を使っているとしても、安全配慮義務や使用者責任から全て逃れられるというわけではありませんが、少なくとも「労災賠償責任」の費用が軽減されることは明らかです。

万が一、労災保険に入っていない一人親方が労災事故にあった場合は、甚大な賠償責任を負うことになりかねません。
あくまで、対処法の一つとしての政府労災保険ですが、労使ともに気持ちよく働くために未加入の方はすぐに加入の指導をお願いいたします。

まとめ

いかがでしたか?
元請けや依頼主は、全ての下請けに対しての「指揮・監督・管理」をしなければなりません。ですから、労災事故から守る義務も発生します。

労災事故から守る義務として「労災保険に加入しているもの」を使用者として作業依頼するのは当たり前のことですよね。

難しいことはさておいて、労災事故が起きた時にはすぐに対処していきましょう!
労災保険に加入・・・・・してなかったのーーー!!は通用しませんから日頃から加入のチェックをお願いしますね。

一人親方さまへお願いです。
労災保険には必ず加入してくださいね。自分を守るのは当たり前ですが、仲間や元請けさまや「仕事」を守ることも大事です。一つの現場は「共同作業」ですから、その仕事が止まったら!みんな困ってしまいますからね。宜しくお願いいします。