傷病補償年金と障害補償給付。この違いを混同してしまう方がいらっしゃるようです。
政府の補償給付制度は、二重で支給されないため、傷病補償年金給付か障害補償給付のどちらかとなります。
傷病補償給付は簡単に言えば、「治療が長期化し、重大な障害が残った方がさらに継続して治療ができる」制度です。
それでは、詳しくみていきましょう。
目次
傷病補償年金ってなに?
傷病補償年金とは、業務または通勤による災害の傷病が、療養を開始してから1年半が経過、またはその日以降において「傷病が完治には至っていない事」「傷病による障害の状態が傷病等級の要件を満たしている事」の両方の条件に当てはまる場合に支給される、年金形式の補償給付制度です。
支給条件
下記の条件をすべて満たしている方が支給対象となります。
医師の診断結果および、業務上の災害としての労災認定が必要
治療を継続してもこれ以上の症状の改善が認められない(症状固定も治癒せず)
歩行に支障がある、会話に支障がある、手足が動かせない等(障害等級とは違う)
就労の継続が困難、または就労に制限がある状態
障害補償給付は障害等級(1~14等級)に応じて年金、または一時金が支給されます。
一方
傷病補償年金は傷病等級(1~3等級)の場合に支給されます。
- 障害等級1~14等級→障害補償給付
- 傷病等級1~3等級→傷病補償年金
業務上の災害による療養(治療等)を開始した日から起算して1年半以上経過し、その時点で医師が「症状がそれ以上改善しない」と判断した場合に、支給の権利が発生します。
療養を始めてから1年半以上経過していることが、「症状固定日」を判断する際の基準として一般的に用いられるためです。
傷害補償給付と障害補償年金給付ってどう違うの?と疑問に思いますよね。
障害補償給付の内容についてはこちらをご覧ください。
https://nisijp631.com/rousai-hosyou1
傷病補償年金と障害補償給付はどう違う?
傷病補償年金は、療養開始から1年半以上が経過しても「治癒せず症状が重く後遺障害が残った」場合に休業補償給付は終了し、代わって傷病補償年金が支給されることになります。
これに対し、障害補償給付は、療養開始から1年半以上が経過し「治療が完了し、後遺障害が残った」場合に支給されます。
このとき重要なのは、「治療は終了しているのか、それとも、今後も治療を続けていくのか」という点です。
傷病補償年金は、療養開始から1年半以上が経過しても「治癒せず症状が重く後遺障害が残った」場合に休業補償給付から切り替わって支給されるものです。
要件等 | 傷病補償年金 | 障害補償給付 |
---|---|---|
治療の有無 | 治療が完了していない | 治療が完了している |
受給権発生時期 | 治療開始から1年半以上経過 | 治療開始から1年半以上経過 |
休業給付切り替え | 休業給付が終了し傷病補償給付へ移行 | 休業給付が終了し障害補償給付へ移行 |
等級要件 | 傷病等級1~3等級までが対象 | 障害等級1~14等級までが対象 |
その他 | 治療完了後、障害が残った場合は障害補償年金へ移行 | なし |
治療から1年半後に
療養(治療)が終了し、障害等級に該当する場合は
障害補償給付
治療から1年半後に
療養(治療)が完了しておらず、療養が継続しており、傷病等級がある場合は
傷病補償年金
いずれにしても、休業補償給付の支給は終了となります。
傷病補償年金給付の詳細
先ほどご説明した通り、重篤な状態であっても治療を継続する場合、傷病等級に応じて給付金の金額が決定されます。
給付基礎日額の313日分
給付基礎日額の277日分
給付基礎日額の245日分
この傷病等級が1級から3級に該当する方のみが対象となります。(障害等級とは異なります)
計算例
給付基礎日額:6,000円型の場合
傷病等級1級の場合
6,000円×313日=1,878,000円(1年間)
3,130,000円÷12ヵ月=156,500円(1ヵ月)
156,500円×2ヵ月=313,000円(2ヵ月)
年金の支給は2ヵ月に1回で、その際に2ヵ月分がまとめて支払われます。
傷病特別支給金について
傷病特別給付金は、給付基礎日額で計算されず、一定額の「一時金」の形式で支給となります。
つまり、福祉の観点から、傷病補償年金とは別枠で追加的に支給されます。
傷病特別支給金額
1,140,000円
1,070,000円
1,000,000円
一度きりの支給となり、継続的な支給はありません。
傷病補償年金のほかに、傷病特別支援金が追加で支給されます。ただし、傷病特別支援金は1度きりの給付で継続的な支給は行われません。この違いを正しく理解しておきましょう。
傷病補償給付に関するまとめ
障害補償給付と傷病補償年金は、内容が似ているため混同されやすい補償給付制度です。なお、傷病補償年金の受給が始まると、休業補償給付は終了することになるので注意が必要です。
治療を開始してから1年半が経過した後も障害が残っている場合、その後も治療を続けられる状態であれば「傷病補償年金」が支給され、治療の継続が見込めない状態であれば「障害補償給付」の対象となります。
いずれにしても、特別加入制度は、将来を見据えて設計された労災保険制度です。
支給対象の権利が発生したら、すぐにご連絡ください。

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副理事 労災保険コンサルタント
大学卒業の後、XEROX(現富士フィルムビジネスイノベーション)へ入社。新規開拓営業として活動する。38歳の時に人生一度切りとの思いから起業し独立。IT、建設、金融、海事から伝統工芸など多種多様な事業展開。SNSが広まる前から興味を持ち、各業界、特に士業関係からセミナー依頼を多数受ける。現在は政府から承認を受け、特別加入団体を立ち上げ労災関連の相談から事務処理業務全般を行っている。
特技は山菜や木の実を見つけること。アケビは大好物。キノコは好きだが、なぜか椎茸は未だに食べられないのが悩み。
里山に入り山菜取りに夢中になりすぎて遭難しかけ、警察沙汰になったことも。釣り好き花好き動物好き。お酒は少々楽しむ程度。
一人親方は法的には労働者ではないため、労災保険に加入できません。
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