「請求書どおりの金額が振り込まれていない」「入金額が少ないけれど、何が差し引かれたのかわからない」
建設業で働く一人親方の中には、このような経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。
材料費や道具代、ガソリン代など、さまざまな経費がかかる一人親方にとって、請求した代金を正しく受け取ることは、事業を続けていくうえで大切です。
請求額と入金額が違う場合は、振込手数料やその他の控除項目を確認し、差額が生じた理由を把握する必要があります。
この記事では、一人親方が請求額と入金額の違いに気づいたときに確認したいポイントや、元請会社への相談方法、知っておきたい取引上のルールについて解説します。


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1. 請求額と入金額が違うのはなぜ?
請求書に記載した金額と、実際に銀行口座へ振り込まれた金額が異なる場合、まずは差額の理由を確認しましょう。
考えられるものには、次のような項目があります。
振込手数料が差し引かれている
元請会社から代金が振り込まれる際、銀行の振込手数料が差し引かれているケースです。
例えば、10万円を請求したにもかかわらず、実際の入金額が9万9,340円だった場合、660円の差額が生じています。この場合、振込手数料が差し引かれていないか、支払明細などを確認してみましょう。
ただし、振込手数料を受注者に負担させてよいかどうかは、取引の内容や適用されるルールによって異なります。単に「昔からそうなっている」という理由だけで判断することはできません。
その他の費用が控除されている
振込手数料以外にも、次のような費用が差し引かれている可能性があります。
- 材料費や資材代
- 車両や機材などの使用料
- 現場で発生した諸費用
- 事前に取り決めた費用負担
これらの控除が適切かどうかは、実際に発生した費用や契約内容、当事者間の合意などによって判断されます。
差し引かれた項目がわからない場合は、元請会社に内訳を確認しましょう。
請求書や支払明細に記載ミスがある
請求金額の入力ミスや、支払処理時の金額の誤りなども考えられます。
請求書の控えと支払明細を照らし合わせ、請求額・控除額・入金額が一致しているか確認することが大切です。
2. 一人親方が確認しておきたい3つのポイント
請求額と入金額に差がある場合は、次の3点を確認しましょう。
① 請求書と支払明細を照らし合わせる
まずは、請求書に記載した金額と実際の入金額を比較します。
確認する項目は、主に次のとおりです。
- 請求金額
- 入金日
- 実際の入金額
- 差し引かれた金額
- 控除の名目
支払明細が発行されている場合は、どの項目で差額が生じているのかを確認しましょう。
② 契約書や発注書を確認する
次に、元請会社との契約書や発注書、取引条件に関する書面を確認します。
特に確認したいのは、次の項目です。
- 報酬や請負代金の金額
- 支払日や支払方法
- 費用負担に関する取り決め
- 代金から控除する項目
ただし、契約書に記載があるからといって、すべての控除が認められるとは限りません。適用される法律や取引上のルールも確認する必要があります。
③ 過去の入金履歴も確認する
同じ元請会社との取引で、以前から同じ金額が差し引かれていないか確認してみましょう。
例えば、毎月660円の振込手数料が差し引かれている場合、1年間で7,920円になります。
660円 × 12か月 = 7,920円
1回あたりの金額が小さくても、継続的に発生すると年間の負担は大きくなります。
過去の請求書や入金履歴を整理しておけば、差額の確認や元請会社への相談もしやすくなります。

3. 振込手数料や代金の控除は認められる?
請求額から振込手数料などが差し引かれていた場合、法律上どのように考えればよいのでしょうか。
建設業の取引では、控除の方法や根拠が重要
建設工事の請負契約では、元請会社が下請会社などに支払う代金から費用を差し引くことを、一般に「赤伝処理」と呼びます。
国土交通省の「建設業法令遵守ガイドライン」では、赤伝処理を行う場合、その内容や差し引く根拠について、元請負人と下請負人双方の協議・合意が必要とされています。
また、同ガイドラインでは、振込手数料について、中小受託事業者に負担させて代金から差し引いてはならないという振興基準上の取り扱いにも注意を促しています。そのため、振込手数料が差し引かれていた場合は、契約内容だけでなく、こうしたルールにも照らして確認することが重要です。
2026年施行の「取適法」も確認しておこう
2026年1月1日から、従来の下請法が改正され、「中小受託取引適正化法(取適法)」が施行されました。
取適法では、適用対象となる取引について、受注者に振込手数料を負担させ、代金から差し引くことが禁止されています。
ただし、取適法がすべての建設業の取引に適用されるわけではありません。建設工事そのものの請負契約と、資材加工や運送などの委託取引では、適用される法律が異なる場合があります。
自分の取引がどの法律の対象になるのか、取引内容を踏まえて確認することが大切です。
4. 入金額が違っていたときの相談方法
差額の理由がわからない場合や、控除の扱いに疑問がある場合は、まず元請会社に事実関係を確認しましょう。
最初から違法だと決めつけるのではなく、請求額と入金額の違いを具体的に伝えることが大切です。
例えば、次のように問い合わせる方法があります。
「先日お支払いいただいた代金について、請求額と入金額に差があることを確認しました。差し引かれた金額の内訳と、その理由について教えていただけますでしょうか。」
回答を受けたら、請求書や契約内容と照らし合わせ、控除の根拠を確認します。
説明に納得できない場合や、法令違反が疑われる場合は、国土交通省の建設業取引適正化センターなどの相談窓口を利用することも検討しましょう。
5. 請求額と入金額を管理する習慣をつけよう
一人親方は、現場での作業だけでなく、請求書の作成や経費の管理も自分で行うことが多いものです。
日々の業務に追われていると、入金額の確認が後回しになってしまうこともあるでしょう。
しかし、請求額と入金額を定期的に照合しておけば、金額の誤りや不明な控除に早く気づくことができます。
例えば、次の項目を一覧表にまとめておくと便利です。
| 管理項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 請求日 | 請求書を発行した日 |
| 取引先 | 元請会社の名称 |
| 請求金額 | 請求書に記載した金額 |
| 入金日 | 実際に入金された日 |
| 入金額 | 銀行口座で確認した金額 |
| 差額 | 請求額と入金額の差 |
| 備考 | 控除の理由や確認状況 |
毎月の入金を確認する習慣をつけることで、資金繰りの把握や取引上のトラブル防止にもつながります。

まとめ|請求額と入金額の違いは放置せず確認しよう
請求書に記載した金額と、実際に振り込まれた金額が異なる場合は、まず差額が生じた理由を確認しましょう。
一人親方が押さえておきたいポイントは、次の4つです。
- 請求書と支払明細を照らし合わせる
- 契約書や発注書で取引条件を確認する
- 振込手数料などの控除が適切か確認する
- 疑問がある場合は元請会社に内訳を確認する
振込手数料やその他の費用負担については、取引の内容によって適用されるルールが異なります。
「少額だから」「以前からそうなっているから」とそのままにせず、請求額と入金額を確認する習慣をつけておきましょう。
日々の入金管理を丁寧に行うことが、安心して事業を続けていくための第一歩です。

お手軽に、PC/スマホで完結!
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副理事 労災保険コンサルタント
大学卒業の後、XEROX(現富士フィルムビジネスイノベーション)へ入社。新規開拓営業として活動する。38歳の時に人生一度切りとの思いから起業し独立。IT、建設、金融、海事から伝統工芸など多種多様な事業展開。SNSが広まる前から興味を持ち、各業界、特に士業関係からセミナー依頼を多数受ける。現在は政府から承認を受け、特別加入団体を立ち上げ労災関連の相談から事務処理業務全般を行っている。
特技は山菜や木の実を見つけること。アケビは大好物。キノコは好きだが、なぜか椎茸は未だに食べられないのが悩み。
里山に入り山菜取りに夢中になりすぎて遭難しかけ、警察沙汰になったことも。釣り好き花好き動物好き。お酒は少々楽しむ程度。
一人親方は法的には労働者ではないため、労災保険に加入できません。
特別に加入できるようにした制度が特別加入の労災保険。労働者ではない一人親方を、労働災害から守る唯一の手段であることを広めていきたいと思っています。
