建設業の一人親方として仕事を続けていると、現場が増えたり、仕事の規模が大きくなったりして、人手が必要になることがあります。

「忙しいときだけ知り合いに手伝ってもらいたい」「そろそろ従業員を雇おうかな」

そんなときに確認しておきたいのが、労災保険の取り扱いです。
一人親方として労災保険に特別加入していても、従業員を雇う場合には、これまでと同じ加入方法でよいとは限りません。

今回は、一人親方が人を雇う際に知っておきたい労災保険の基本と、加入状況を見直すポイントについて解説します。

一人親方が従業員を雇うと何が変わる?

一人親方とは、基本的に従業員を雇わず、自分自身で建設工事などを請け負う事業主のことです。

通常、労災保険は雇用されている労働者を対象としていますが、一人親方は「特別加入制度」を利用することで、一定の条件のもと労災保険に加入できます。ただし、この特別加入は、あくまで一人親方本人を補償するためのものです。

従業員を雇った場合、その従業員まで一人親方の特別加入で補償されるわけではありません。

そのため、人を雇う際には、従業員の労災保険と、自分自身の特別加入について、それぞれ確認する必要があります。

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短期間の手伝いでも労災保険は必要?

「毎日雇うわけではないから、労災保険は必要ないのでは?」

そう考える方もいるかもしれません。
しかし、労災保険は正社員だけでなく、パートやアルバイト、短期間だけ働く人も対象になります。
例えば、次のような場合です。

  • 忙しい現場だけアルバイトを雇う
  • 知り合いの職人に日当を支払って手伝ってもらう
  • 工期に合わせて短期間だけ作業員を雇う

これらのケースでも、実際の働き方が労働者に該当すれば、労災保険の対象になります。

なお、建設業では原則として元請事業主が工事全体の労災保険を成立させる仕組みがあるため、下請事業主が雇用する作業員については、元請工事の労災保険との関係も確認することが大切です。

人を雇ったら一人親方の労災保険は使えなくなる?

従業員を雇ったからといって、必ずしもすぐに一人親方の特別加入ができなくなるわけではありません。
判断するうえで重要なのが、労働者を使用する日数です。

年間100日が判断の目安

一人親方の特別加入では、労働者を使用する日数が年間100日に満たない場合、引き続き加入対象となることがあります。
一方、労働者を常時使用するようになった場合や、年間100日以上使用する場合には、中小事業主等の特別加入への変更を検討する必要があります。

働き方特別加入の考え方
自分一人で仕事をしている一人親方の特別加入
短期間だけ人を雇う一人親方の特別加入を継続できる場合がある
継続的に従業員を雇う中小事業主等の特別加入を検討
年間100日以上、労働者を使用する原則として中小事業主等の特別加入の対象となる

ただし、年間100日という基準は、雇い始めから100日間は必ず一人親方のままでよいという意味ではありません。
今後の雇用予定や実際の働き方によって判断が変わるため、早めに加入団体などへ確認しましょう。

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外注の職人に手伝ってもらう場合は?

建設業では、従業員を雇う代わりに、別の一人親方へ仕事を依頼することもあります。
この場合、注意したいのが「外注」と「雇用」の違いです。

契約書に業務委託や請負と書かれていても、それだけで外注と判断されるわけではありません。
例えば、

  • 作業時間や仕事内容を細かく指示している
  • 仕事の進め方を自由に決められない
  • 時間や日数に応じて報酬を支払っている
  • 道具や材料を事業主が用意している

といった事情は、労働者に該当するかどうかを判断する際の要素になります。
ただし、これらの条件に当てはまるだけで、必ず従業員になるわけではありません。

契約内容だけでなく、実際の働き方を総合的に確認することが大切です。

中小事業主の労災保険へ変更する場合は?

従業員を継続的に雇うようになり、一人親方の特別加入の対象から外れる場合には、中小事業主等の特別加入を検討します。

中小事業主等の特別加入は、一定の条件を満たす事業主が、労災保険による補償を受けるための制度です。
変更を検討する際は、次の点を確認しましょう。

① 従業員の雇用状況を整理する

現在雇っている人数だけでなく、今後どのくらいの期間、人を雇う予定なのかを確認します。
短期間の雇用なのか、継続的な雇用なのかによって、必要な手続きが変わる場合があります。

② 現在の加入団体へ相談する

一人親方の特別加入から中小事業主等の特別加入へ変更する場合、加入先や手続き方法が異なります。

中小事業主等の特別加入には、労働保険事務組合への事務委託などの要件があります。
手続きに時間がかかる場合もあるため、人を雇う予定が決まった段階で相談しておくと安心です。

③ 自分自身の補償も確認する

従業員の労災保険だけでなく、事業主本人の補償についても確認しておきましょう。

特別加入の種類が変わる場合は、補償の対象となる業務や給付基礎日額なども確認することが大切です。

家族に仕事を手伝ってもらう場合は?

配偶者や子どもなど、家族に仕事を手伝ってもらうケースもあるでしょう。
ただし、家族だからといって、必ず労災保険の対象になるわけではありません。

特に、同居している家族については、原則として労働者に該当しない取り扱いがあります。
一方、家族以外の従業員と同じような条件で働いている場合などには、労働者として認められることもあります。

家族が仕事に参加する場合も、働き方に応じて補償の対象となるか確認しておきましょう。

人を雇う前に確認しておきたいこと

初めて従業員を雇う場合は、次のポイントを整理しておくと、必要な手続きを判断しやすくなります。

□ 雇う人の働き方は従業員か、外注か

□ 年間でどのくらいの日数、人を雇う予定か

□ 従業員の労災保険はどのように適用されるか

□ 現在の一人親方の特別加入を継続できるか

□ 中小事業主等の特別加入への変更が必要か

また、従業員を雇う場合には、労災保険だけでなく、雇用保険や社会保険、労働条件の明示などについても、必要に応じて確認しておきましょう。

まとめ|人を雇う前に労災保険の加入状況を確認しよう

一人親方として仕事を続けていても、人を雇うようになると、労災保険の取り扱いが変わる場合があります。

特に大切なのは、従業員の補償と、自分自身の補償を分けて考えることです。

短期間の手伝いであっても、労働者に該当する場合は労災保険の対象になります。また、雇用する日数や働き方によっては、一人親方から中小事業主等の特別加入への変更が必要になることもあります。

「今の労災保険のままで大丈夫かな?」と迷ったときは、早めに加入先の団体や労働基準監督署などへ確認しておきましょう。

仕事の規模が変わるタイミングだからこそ、労災保険についても見直しておくことが大切です。

※本記事は2026年10月時点の公表資料を参考に作成しています。実際の加入要件や手続きは、事業の形態や雇用状況によって異なります。

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